ニコニコ動画、ついに失速の理由

すでに、あちこちで触れられているように「ニコニコ動画」のアクセスが5月半ばから落ち始めたようだ。運営者からの発表はなく、論拠となるのがAlexaのデータくらいだから、数字でははっきり出てこないが、「ニコ厨」の1人として言えるのは、多くのユーザの目を引くような強烈なコンテンツが急に少なくなったこと。総合ランキングに上がってくる動画が「小粒」になってきたのだ。

理由は、ただ1つ。違法アップされた動画の削除を精力的に実行しているからだ。以前は、権利者からの申し立てがなければ削除しなかったテレビ番組の一部も、明らかにテレビだとわかれば、ニコニコ動画側で削除している。テレビのニュース動画をネタに、コメントで盛り上がるという現象も、ほぼ見られなくなった。もちろん、アニメなどの一話まるまるアップも激減した。たとえば、検索ボックスに「らき☆すた」とか「涼宮ハルヒの憂鬱」とか入力したら、全話ヒットしたという時期もあった。ご丁寧に、DVDからリッピングしていたものもあった。

さて、ここから何が起こったか。まずは、ユーザが違法アップされた動画を目にする機会が減ってきた。昨年なら、「ぼくらの」とか「さよなら絶望先生」とか、ニコニコ動画で全話見ることができた。総合ランキングにあがってくるくらい、多くのユーザが目にしていた。しかし、今ではそれはあり得ない。

すると、多くのユーザが知っているアニメが減ってくる。ニコニコ動画でアニメを見ていた人の中には、ニコニコ動画からそのアニメがなくなったとき、テレビのスイッチを入れてDVDレコーダーで録画するかと言えば、そのまま見なくなってしまう人が多いと思われる。つまり、ニコニコ動画から消えるとともに、そのアニメの知名度も下がってしまう。

ここで連鎖が止まるなら、まだいい。違法アップされた動画を見に来ていたユーザが離れ、違法アップされていたアニメ番組の知名度が下がるくらいなら、それはコンテンツホルダー各社のスタンスにしか関係ない。しかし、問題はそこにとどまらない。MADが成り立たなくなってくるのだ。

よいMADに必要な条件は、素材を集め、組み合わせる制作者のスキルだけではない。見ている人が元になった素材を知っている必要がある。知らない素材を組み合わせても、「そういうものか」と思われるだけだ。意外性を感じさせるMADを作るには、広く知られている素材が数多く必要なのだ。違法アップされた動画の削除が厳しくなったことにより、多くのユーザが知っている動画が少なくなってしまい、MADの成立条件を満たさなくなった。これにより、優れたMADを制作することが難しくなった。

よいMADが減った原因としては、もちろん、「本編だけでなく、MADも削除する」というニコニコ動画運営者や権利者側のスタンスも挙げられるが、しかし、「削除されるから減る」以外の理由が潜んでいるのを見過ごしてはならない。結果として、おもしろいMADが減ったために視聴時間が減少し、ついにはユーザが減少し始める。

運営者側はこの流れをどう見ているか

さて、このようにMADの制作・発表のための場としては、その役割を終えたニコニコ動画だが、運営者側はこの流れを嫌悪していないと思われる。なぜなら、回線使用料が大変なことになっており、このままでは黒字化の見通しが立たないからだ。以前、ユーザを招いた記者発表会でも誰かがちらっと言っていたが、ユーザそれぞれの視聴時間は減り、ユーザ数が増えてくれた方が広告掲載のためにはいいらしい。

とにかく、データの流量を減らさないといけない。収入源も増やさねばならないので、コンテンツ事業者などとも良好な関係を気づく必要がある。となれば、コンテンツ削除のガイドラインを厳しくし、違法アップされた動画のように、視聴が集中しやすいコンテンツを削除するのがいろいろな面でいいだろう…そう考えて、いわゆる「削除祭り」になったのだろう。

ひろゆきが公言していたように、違法アップされたアニメを見たい人はニコニコ動画からいなくなってくれ、というのは運営者側の本音に違いない。ただ、ユーザが大きく減るのはおもしろくない。そこで、導入されたのが、「ニコニコ映画祭」であり、よしよし動画などの公式動画であり、コミュニティ機能だろう。「歌ってみた」「踊ってみた」なども含めて、CGMっぽいものを推進すると同時に、ユーザの囲い込みを促進し、さらに公式動画や他業種とのコラボを含めて、いろいろな引っかかりを用意しておき、ユーザから見た間口を広げる作戦に出ていると考えるべきだ。いずれもキラーコンテンツとなるには力不足のため、継続的にコンテンツを供給できるように、いろいろなアイディアが必要だろう。

ニコニコ動画は、すでに動画共有サイトという新しいインフラの一角を占めるようになった。多少ユーザが減ったとしても、何とか運営していくことはできよう。少なくとも、しばらくの間は、国内の動画共有サイトではトップを走ることは間違いない。しかし、もはや新しさは感じられないし、初期の熱狂的な支持もまた感じられない。

機能面を見ても、会員以外は限られた方法でしか視聴できず、プレーヤーごと貼り付けられないブログが多いという点でYouTubeに劣り、画質・音質でzoomeに劣る。コンテンツ面では、違法アップされた動画の数では中韓のサイトやYouTubeに劣る。ニコニコ動画が他の動画共有サイトに大きく勝っているところがあるとすれば、ユーザからの支持だろう。「削除祭り」を発端とし、アクセス減、MAD職人のzoomeへの逃避など、大きな問題がある中、どういう舵取りをしていくのかを見守っていきたい。

(追記)
アホすぎる動画を見つけたので、追加。

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